- リンクを取得
- ×
- メール
- 他のアプリ
2020年の9月頃に発表されたDirtywave M8というTracker(音楽制作ツールの一種)があります。開発者のTrash80氏は、マイクロミュージックやチップチューンを中心として活動するミュージシャンであり、古くはGBCのProsound Modの考案や、近年ではGB用のMIDI I/FのArduinoboyをオープンソースで公開したりなど、シーンの発展に音楽面だけでなくハード面でも貢献してきた人物です。
このM8は、Trash80氏のPatreonの説明文によると
M8 is an open-source portable handheld 8 track music hardware sequencer taking large inspiration from the popular Gameboy software LSDJ.と説明されており、 LSDj(GB実機用のTracker)に強くインスパイアされた8トラックのポータブル(ハードウェア)Tracker、かつオープンソース。との事です。
また公式サイトの説明では、マイコンボードのTeensy 4.0をベースとしている旨も記されています。
M8は発表されてすぐに、インスパイア元のLSDjのユーザー達(私含む)から大きな注目を集めました。その機能群は、LSDjを忠実に継承しつつも、かなり発展されたものになっていたというのが理由でしょう。今日時点(2020/12/25)で実装されている機能からいくつかを取り上げると、
- 8トラック利用可能 (LSDjの2倍)
- InstはWavesynth(LSDjのPUxとWAVとNOIを統合したようなもの), Macrosynth(Wavetableシンセのようなもの?), Sampler(名前の通りサンプラー)から好きに組み合わせられる
- 2系統のエンベロープと1系統のLFO(各Inst毎)
- LSDjスタイルのTABLE機能を搭載
- コーラス、ディレイ、リバーブ、マスターリミッター内臓 (全てグローバル)
- MIDI IN/OUT搭載
- 曲やSamplerのサンプルデータのやり取りはmicroSDカードで行う
- 操作の基本部分はLSDjと共通
など、LSDjを拡張・強化したようなシステムになっています。
( 非LSDjユーザーからしたらそれって何?って話もありますが…インスパイア元のLSDj抜きにM8を説明するのは少々難しい為、この点についてはご容赦ください。)
発表時点で既に筐体デザインも公開され、今日時点(2020/12/25)でも実際の専用ハードが一部の人々に渡っています。(Patreonの支援者に優先的に案内しているようです)
ソース公開はまだ行われていませんが、ビルド済みのファームウェアバイナリが公開されており、専用ハード向け(M8Firmware)と、Headlessと名の付いたもの(M8HeadlessFirmware)(後述)が公開されています。
専用ハード向けはその通りM8の専用ハードに向けたものですが、Headless版は専用ハードではなく、ベースとしているTeensy 4.0の上位版のTeensy 4.1に書き込んで、PC経由で画面表示や操作、音声再生を行うもので、Teensy 4.1と一定以上のスペックのPCを持っていれば利用することができます。
私自身、前述の通りM8には惹かれていたものの、今年(2020年)の情勢色々もあり作曲そのものへのモチベーションが上がらず、時々外野からチェックしつつもあまり積極的に入手の手立てを整えるような事はしておらず、知人友人がM8の専用ハードを手に入れていい音を出しているのを指を咥えて見ていました。
そんなある日にHeadless版のファームウェアバイナリが公開されたのに気づき、機をうかがっていた所に盟友Scythe(と、彼にHeadless版の話をした共通の友人Mikey303)の後押しを受けてHeadless環境を整え、使い始めました。Thanks Scythe and Mikey.
私は「自分が思いついたアイデアを最も早く形にできる環境はLSDjです」と言えるぐらいにはLSDjのキーバインドやワークフローが染みついているのですが、それらを踏襲しつつ進化させたM8は、触り始めてさほど迷う事もなく音を並べ、増えた機能をワクワクしながら触り…と遊んだ結果、その晩には一曲完成してしまいました。
(この曲はChipNotesのWinterコンピレーションに提出したので、2月頃にリリース予定です。)
LSDjの画面でもっと色々なものが作れれば、と以前から感じていた自分にとって、M8はHeadless版を触った時点で理想と言っていい程の選択肢になり得る感触がしています。これが持ち運べたら更に…今は完全に専用ハードが欲しくなっています。
(記事が長くなってしまってすみませんが、現状ほぼ英語にのみ情報が流れている状況だった為、M8のこれまでの経過も含めて書き綴りました。本当はHeadlessの導入について書くつもりでもあったのですが、さすがに記事を分ける事にします。)
この記事の元になったツイートはこちら
21/01/21 追記: 導入解説の記事を書きました。こちらからどうぞ。
コメント
コメントを投稿