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※記事を読んで取り組んだ結果についての責任は一切持ちません。
※記事の内容は、原則として2ASICタイプのものです。1ASICタイプについては、本体の入手歴が無く不明です。
ゲームギア(以下GG)は、使用されている電解コンデンサの劣化による故障が非常に一般的で、今(2021年)現在のGG本体はまず確実に交換作業が必要になってきます。
基本的には同一の値のコンデンサを入手して置き換えていけばよいのですが、いくらか注意点が存在するので、今回はこれらについてまとめます。
(こうすればよかった…という反省録も含みます。)
まえがき
GGの修理は電子工作初心者向けではない
慣れていれば他より楽な部分(リード品を外すよりかは楽だったりとか)もあるのですが、不慣れな状態で挑戦すると悪化させることもあると考えているので、あえて書かせていただきます。- 部品を外す必要がある
GG修理は電解コンデンサを外して新しいものと置き換えるのが基本ですが、ハンダ"付け"の経験はあっても、"外し"の経験を積んでいるかは結構怪しい方もいるのではないでしょうか。
もちろん「やらなきゃ上手くならない」部分もあるのですが、手元の大切なGG本体を修理不能に追いやってしまわないように、ハンダ吸い取り線の取り扱いなどを先に十分理解しておく事をお勧めします。(うまく吸い取れない時にするべきことなど)
また、電源基板の電解コンデンサのみリード品が使われていますが、こちらのパターンも過熱すると剥がれてしまいやすい為、壊さないためにある程度の慣れを要すると考えています。 - 新しい部品の取り付けが少し難しい
GG基板に使われている電解コンデンサは、電源基板の3か所を除いて表面実装タイプです。形状は一般的なリード品にむしろ近く、現代の表面実装タイプとは違った形状ですが…よって、基板には電線を通すための穴がありません。
かといって現代の表面実装品では高さが干渉する、パッドの大きさが合わないといった問題が起こる部分がある為、基本的にリード品で表面実装品を置き換える事になるのですが…最低限、十分にハンダ付けを行えるようになっておくべきと考えています。
(実装方法違いのタイプを載せるといった作業なので、あまり練習できる場が無いのはどうにもなりませんが…。)
また、電解コンデンサには極性(≒向き)が存在するため、間違えると起動しません。 - 修理できない状態になっている事がある
次の項目で詳しく語ります。
何事もそうだと思いますが、初心者の頃は達成したという経験が次の糧になると思いますが、逆に正しく作業したにもかかわらず達成できないというのはストレスが大きいです。残念ながら、GGはそういった状態に陥りやすい製品です。取り組む前に、「駄目元」と割り切れる心を得てから取り組む事をお勧めします。
修理作業を行っても復活できない場合がある
全ての作業が徒労となる可能性が結構高いです。(私も3台挑戦したうち、1台はダメでした)
液晶の寿命だったり、ICの故障だったりといった事ももちろんあるとは思いますが、一番の原因は主に電解コンデンサに使われていた電解液による被害が大きいです。
以下に知る限りの背景も含めて綴っておきます。
---ここから---
GGは1990年~の販売で、末期のキッズギアでも1996年~ですので、確実に20年は経過しており、電解コンデンサの一般的な寿命は超えているのでこの時点で交換が必要なラインですが、作業上大きな問題が一つあります。
GGに使われていた電解コンデンサは、当時としては小型の部類です。
ただこの年代の小型電解コンデンサは、四級塩(第四級アンモニウム塩)と呼ばれる成分の電解液を使用しており、後々その電解液が漏れるという不良が多発した事が一部では知られています。
(自分が見た限りでは、同タイプの電解コンデンサはバーチャレーシング(MD版 - 32X版でない)にも使用されている為、同様の問題が発生します。)
前述の通りこの電解コンデンサは液漏れの発生確率が非常に高く、漏れた液はもちろん基板に付着しています。漏れた電解液は電極はもちろんのこと、基板にも悪く、ショートを発生させたり、腐食を引き起こしたりします。
電解コンデンサを交換しても治らないケースの原因の一つは、これによるものと考えています。
また、古い電解コンデンサを外す為にこの電解液の漏れた部分を半田ごてで加熱すると、揮発し、悪臭が発生します。ちゃんと調べてまではいませんが、体に良くなさそうな臭いがします。
---ここまで---
長くなりましたが、以上を踏まえて実際の作業についての注意を挙げていきます。
実作業
修理に関する情報は、Console5のGGのページに概ねまとまっています。
この記事では取り上げていませんが…Console5の情報を見てみると分かるように、1ASIC機の基板は1タイプではなく、複数存在します。
また音声基板や電源基板についても、複数のタイプが存在しています。修理に取り組む際は、まず最初に自分の手持ちのGG本体の外装を開けて、実際に載っている電解コンデンサの定数を確認してください。
Console5のページは部品表づくりの参考にはなりますが、何よりも手元の実機を優先しましょう。
本体外装を開けるには、プラスドライバーの0番と、カートリッジスロットの部分の特殊ねじを開ける為にDTC-27か同等品が必要になります。
(メインボードの液晶と、液晶を接続しているケーブルの取り扱いには十分注意してください。)
電解コンデンサを外し、基板に残った汚れを取る
※作業時は漏れた電解液の揮発した臭いが立つので、十分な換気を行ってください
※必ず作業前に、部品の定数や表示が見えるような基板の写真を撮っておきましょう
- 古い電解コンデンサを基板から外す
電解コンデンサの外装が基板に接着剤か何かで固定されているので、まずは基板から剥がす所から始めます。
このような感じでペンチを使って挟み、軽くねじるように力を掛けると
基板と接着されていた部分が割れて、このように起こせます。(基板側に残った電解コンデンサの外装は、無理のない範囲で取れそうなら取っておきます。)
この状態であれば、半田ごてとハンダ吸い取り線を使えば簡単に取り外せます。
または、電解コンデンサのリード(足)を先に切ってしまい、
その上でハンダ吸い取り線等を使って残りを取り除く、というやり方もあります。
ハンダに電解液がかかったり、そもそもフラックス不足になっていたりするので、その部分は随時対応しながら進めます。
このトランスの横にある大きいものは外しにくいですが、このように挟んで力を掛け「パキッ」と接着を剥がし…
外装をニッパー等で先に破壊すると外しやすいです。 - 取り外した跡を清掃する
古いハンダを除去するのはもちろんですが、前述したように漏れた電解液が付着している為、これも清掃します。
まずはハンダ吸い取り線で古いハンダを念入りに取り除きます。
その後に漏れた電解液の跡を十分に取り除きます。やり方には色々あると思いますが、私は無水エタノールを含ませた綿棒や、キムワイプを使って清掃しています。(繊維が基板に目に見えて残ったりしていないかは十分注意しています)
電極だけでなく、周辺についても電解液が漏れて広がっている可能性があるので、よく清掃しておきましょう。
作業前(足をニッパーで切っただけの状態ものも含まれています)はこんな様子ですが、
作業後はこうなります。
古いハンダ、漏れた電解液は新たな故障を引き起こす為、修理後に長く使うためにも綺麗にしておきましょう。
電源基板や音声基板についても同様に行いますが、電源基板の3か所のコンデンサのみリード品です。こちらについても基本は同様ですが、基板の電極(パターン)は過熱すると剥がれる事がありますので、ハンダを足したりなどしながら慎重に行ってください。
新しい電解コンデンサを取り付ける
先ほど綺麗にした電極に、対応する新しい電解コンデンサを取り付けていきます。
極性は基板上に記載がありますが、念の為作業前に撮っておいた写真を確認しながら行いましょう。
作業について
取り付けは電解コンデンサのリードを曲げて、電極にハンダ付け…を繰り返していくだけなのですが、GGは上部と下部の外装の隙間が非常に狭く、年代にしては実装密度も高いため、注意しないと蓋が閉まらない、他の部品と干渉する、といった事が容易に起こります。
そのため、電解コンデンサは可能な限り水平に取り付ける事を推奨します。
コツとしては、ひとつ取り付ける際に、部品を仮置きした後、綺麗に閉まるか一度閉じてみる事です。手間はかかりますが、これで閉まるのであれば確実です。
場合によってはリードを曲げて角度を付けて干渉を避けるといった事を行わなくてはならないので、仮置きはリードを切らずに行いましょう。
部品選定について
(以下で挙げている参考型番は、今日(2021/02/11)現在、千石電商の本店B1F,、およびせんごくネット通販で販売中です。)
※重ね重ねになりますが、以下は私の修理した2ASIC機に関するものです。お手元のGG本体とは部品配置や定数等が異なる可能性があります。
基本的には一般的なφ5mm x 11mm品を選べば大丈夫ですが、いくらか「ここはこっちがいい」があるので纏めます。
【小型品が適している場所】
あくまで手元の2ASICタイプの情報のみとなりますが、これらの場所については、小型品を使用する方が簡単と思われます。
- メイン基板(837-7398-03)
部品番号 容量 耐圧 参考品番 C1 33μF 6.3V 0JUTCX330M C3 10μF 6.3V 1CUTCX100M C6 10μF 6.3V 1CUTCX100M C44 0.47μF 50V UMW1HR47MDD C45 0.47μF 50V UMW1HR47MDD C48 10μF 6.3V 1CUTCX100M C49 22μF 6.3V 0JUTCX220M - 音声基板(837-7400-03)
部品番号 容量 耐圧 参考品番 C5 47μF 4V 0JUTCX470M C7 47μF 4V 0JUTCX470M
適切なサイズを選定した場合は、このように非常に収まりよく取り付けられます。
元の電解コンデンサとサイズも近い為、外装との干渉も避けられます。
ただ上記のリスト、特にメイン基板側については未確認の…頭の方で述べた反省録の部分となります。5mm x 11mm品を使用した場合、どうなるのかについてお見せしておきます。
C1, C3, C44は、このように大きくはみ出してしまいます。他の部品とショートしてしまう危険は無さそうでしたのでそのまま設置してはいますが、あまり良いとは言えないでしょう。
C6はASICと大きく干渉するため、このようにリードを90度曲げて設置しました。曲げた先にC5(セラコン)があり、電解コンデンサの頭と触れてしまいそうに見えたため、カプトンテープで保護した上で取り付けています。
この写真では未取り付けですが、C48は一応大丈夫ではあるものの、外装と干渉する寸前といった様相だったため、ここも小型品を選ぶと安心と思われます。
C45, C49には、なかなかアクロバティックな配置が求められました。
C45は直下にC44が存在するため、これを避ける必要があります。小型品ならそのままでも大丈夫…かもしれません。
C49は元の向きに取り付けると外装と干渉するため、逆方向で取り付けています。これも小型品であれば干渉を避けられるのではないでしょうか…。
ちなみにC35はこれでも一応大丈夫ですが、1EUTCX4R7Mのような小型品も手に入る為、ここも小型品にしてもよいかもしれません。
…と、お恥ずかしい姿を晒しましたが、今後取り組む方の参考になれば幸いです。
「68μF!?そんなのあるの?」とお思いの方もいるかもしれませんが、あります。実際マイナーな容量だとも思います。
機能的には100μF辺りの容量の近いものでも置き換えは効くようで、それによる修理例も見かけますが、68μFは手に入らないものという訳でもありません。
写真はニチコン製UMF0J680MDDで、千石電商やDigi-Key等で手に入ります。(せんごくネット通販のページだと、ニチコン製にも関わらず、何故か東信工業の製品のカテゴリで表示されるのが気になりますが…。)
また「そんなのある?」という声が聞こえてきそうですが、あります。このコンデンサは電源基板で使われています。この交換後の写真(右側が電源基板)の、右下のやや大柄なコンデンサがそれにあたります。
使っているのはニチコン製UHZ1A821MPMです。例によって千石電商やDigi-Key等で手に入ります。
といった形で手間暇かけて、いざ通電…(何が起こるか分からないので、安いカートリッジでやりましょう)
よかった動きました。おめでとうございます。
動かない!という事もありますが、まずは部品の取り付けミスが無いかを確認です。そうでなければ…例えば漏れた電解液が基板を侵したり他の表面実装部品を腐らせたですとか、色々と他の原因が考えられますが、原因特定の難度が非常に上がる為、修理は困難になってきます…。
できる限りを尽くしても、動いたらラッキーという感じなのがGG修理だと思います。
部分的には途中で挙げましたが、改めて私が今回2ASIC機を修理した際に使用した電解コンデンサ一覧を載せておきます。
(ただし、前述の小型品を使えば良かったと思っている部分はそれに改めています。)
- メイン基板(837-7398-03)
部品番号 容量 耐圧 参考品番 C1 33μF 6.3V 0JUTCX330M C3 10μF 6.3V 1CUTCX100M C6 10μF 6.3V 1CUTCX100M C31 100μF 6.3V 1AUTES101M0 C35 4.7μF 35V 1VUTES4R7M0 C37 68μF 6.3V UMF0J680MDD C39 100μF 4V 1AUTES101M0 C44 0.47μF 50V UMW1HR47MDD C45 0.47μF 50V UMW1HR47MDD C48 10μF 6.3V 1CUTCX100M C49 22μF 6.3V 0JUTCX220M - 音声基板(837-7400-03)
部品番号 容量 耐圧 参考品番 C1 100μF 6.3V 1AUTES101M0 C2 100μF 6.3V 1AUTES101M0 C3 100μF 6.3V 1AUTES101M0 C5 47μF 4V 0JUTCX470M C7 47μF 4V 0JUTCX470M - 電源基板(837-7730-03?)
部品番号 容量 耐圧 参考品番 C5 22μF 35V 1VUTES220M0 C11 100μF 25V 1EUTES101M0 C13 820μF 6.3V UHZ1A821MPM
繰り返しになりますが、GG修理は確実に復活できるとは限らない部分もあります。
それを理解しつつも、手元のものを直して使いたいと挑戦する方の参考になれば幸いです。
コメント
修理ではありませんが、サブ基板は丸ごとの交換がおすすめです。
返信削除http://chaos-seed99.xyz/2020/12/27/
セラコンならサイズが合わなかったり極性を気にする必要もありません。
http://chaos-seed99.xyz/2021/01/26/