今年買ってよかったもの 2023年版

色々検討した上でPC-9821を入手

そこまで用途を色々考えている訳ではないのですが、PC-9821を手に入れました。
最終的に手に入れたのはPC-9821Ae/U2になりましたが、PC-98についてまっさらな人間が書くような記事がインターネット上に不足している気がしたので、選定基準やその後の作業についてのメモを残しておこうと思います。

まず手に入れた個体はこちらです。

クラシックPCの中でもPC/AT互換機と呼ばれていた世代やMSX辺りには以前から多少の心得があったものの、PC-98は今回調べ回る所から始まったので、知らない方でも何となくわかるようなざっくりとしたまとめも書いてみます。
前提となる情報についても説明を書いたりしたため、長くなってしまいましたが…
情報収集や機種選定について、第三研究所さんのNEC PC-98超入門が理解の助けになりました。感謝いたします。

【そもそもPC-98って何】
PC-98シリーズはNECが80年代末~00年代初頭頃まで展開していたパソコンで、現在(2022年)主流のパソコンのベースとなったPC/AT互換機とは異なった構造を持ったものでした。PC-9801が基本的な型番で、PC-9821は9801の(基本的には)上位互換シリーズになりますが、どちらもいわゆるPC-98シリーズの内に入ります。
また、同じ98の名前を持つ有名なものにWindows98が存在しますが、PC-98という名前には関係がありません。PC-98はそれ以前から存在しています。でもWin98のPC-98版は存在します。ややこしいですね。
また、98は98でもPC98-NXは内部構成がPC/AT系に変わったので、PC-98シリーズには含まないと考えたほうがいいです。
(ややこしいですがPC98(PC97)というPC/AT互換機のハードウェア規格があります。PC-98とはこれもあまり関係がありません。しかしPC98-NX初代はこの規格に準拠しています。これまたややこしいですね。参考記事)

型番表記はPC-98[01 or 21][アルファベット等]といった書式で、販売が20年ほど続いた事もあり、機種間での搭載機能の差が大きいです。自分の用途に応じて必要なスペックを取捨選択する事が機種選定の第一歩となる印象でした。
正直、まっさらな初心者には第一の壁として立ちはだかるものだと思います…

今回の場合は、「エミュレーター用のフォントデータなどを吸い出したい」が最低基準で、これ自体はどの機種でも要件は満たせますが、調べた結果として、
・FDDは3.5インチ、2HD対応の機種がいい (手元にあるFDが3.5インチ2HDのみのため)
・現代基準で見て特殊なディスプレイでなくとも映ってほしい (わざわざ用意したくない)
・86音源はできればほしい (データを書けば鳴らせる、サウンドBIOSも手に入る)
といった点も視野に入れて機種選定を行いました。

 

 【機種選定の基準の内訳】
=FDD=
ダンプ作業のためには、最低限ブランクFDを98の形式でフォーマットできる環境と、その後に書き込んだプログラムをPC-98で動作できるFDDが必要です。
PC-98のFDフォーマットは、PC/AT互換機(現行のWindows含む)と違うフォーマットを利用しており、イメージ書き込みを行う前に物理フォーマットを実行できる環境が必須です。現行のWindows機でも方法があるようですが、PC-98用MS-DOSを所有してもいるので、実機上でできる方が確実です。
自分が手元に持っているFDは皆3.5インチ2HD(世代的にはPC/AT機時代のもの)のため、5インチや8インチのFDDの機種はまず除外、その上で2DDしか使用できない本体も除外します。
所有しているMS-DOS5.0Aも3.5インチ版なので、こちらを動かしつつブランクディスクをフォーマットできるようにFDD2台構成か、MS-DOSをインストールして作業できるHDD搭載機である必要があります。
(98用Win95も所有していますが、ダンプについてはMS-DOSで事が済むので優先しないことにしました)
(ダンプの実施後にMS-DOSではなくFreeDOS(98)を使用したり、Win上からFDを98形式でフォーマットする術を見つけたので、この後の解説記事ではその方法で行っています。)

=ディスプレイ=
PC-98シリーズの基本解像度は640x400、水平同期周波数は24kHzが基本で、これが映るのが条件になりますが…ざっくりPC-9821であれば31kHz出力モードを持っているため、現代のディスプレイでもアスペクト比の特殊さはともかくとして映すことはできるようです。手元にあるディスプレイ(RDT234WX)は、報告によれば24kHzも受け付けてくれるのでなんでもいいといえばいいのですが…この機種も古くなってきているのでいつまでもつかもわかりませんし、頼るのは避けたいと考えました。
PC-9821の場合はVGA端子を持っているので、概ね直接D-Subケーブルで接続可能なのもありがたい所です。
PC-9821での31kHz出力切替は、起動またはリセット時に[GRPH]+[2]キーです。24kHzにしたい場合は[GRPH]+[1]キーを代わりに押すと切り替わります。

=音源=
86音源については…まず86音源って何かという話ですが、前提としてこの年代のパソコンでは、サウンド機能は多くの場合オプションだったり上位機種のみ搭載だったりといった事がよくありました。
86音源はPC-9801-86という型番で発売されたサウンドボードの通称で、PC-9821初代に搭載された音源機能を、過去機種向けに拡張ボードとして単体化したもの、のようです。これ以前のPC-98シリーズにもサウンド機能の搭載やオプションはあり、そちらは26音源(型番がPC-9801-26 or 26K)と呼ばれていました。86音源は26音源の上位版にあたります。
前述の通り、内蔵音源を分離したものが単体ボードという関係にあるため、機種によってはその機能が内蔵されています。具体的にはPC-9821の初代~MATE Bシリーズあたりまで…なのですが、PC-9821のC型番(CanBe)のように若干仕様の違うものの互換性がある音源が載っている機種もあったりと、中々に事情が複雑です。

以上を踏まえて、PC-9821初代~MATE Bシリーズが理想、でも価格優先で、という方針が決まりました。

 

【実機の入手】
PC-98はもはやハードオフで見かける事も稀なので、実物を物色したい場合はこの年代の機種を取り扱う専門店に行くのが早いです。正直手っ取り早いのはネットオークション等ではあるんですが…という事で秋葉原に向かい、取り扱いのありそうなBEEP秋葉原さんと神田装備さんをチェック、狙いの機種で手ごろなものがちょうどBEEPさんにあったので、キーボードと同時購入しました。(PC-98のキーボードも独自で、現代のPC用キーボードでは基本的に代替できません)
ただジャンク品で、状態が色々書いてありましたが(上写真参照)「読んだり読まなかったり不安定」ということは「読むこともある」とポジティブに考えて持ち帰りました。列車と自転車の乗り継ぎでしたが、約10kgある筐体を持ち帰るのは非常に大変でした。「事務パソコン買うのに車が必須だった時代か…」とか想いを馳せながら、入れてもらった紙袋を下から両腕で抱えて、店舗から御徒町まで歩いたりしていました。

 

こうして手に入れたPC-9821Ae/U2、MATE Aと呼ばれる世代のものに当たりますが、この時期の機種は後年に問題を引き起こした電解コンデンサが使われていたりすることもあり、本格的な実働の前にまず電解コンデンサを全て交換する事が推奨される世代になります。(ここも第三研究所さんの記事に詳しいです)ドライブの不安定さにこの電解コンデンサが関係していると思われますが、全交換メンテして販売するほど労力をかけられないと判断して、ジャンクとして置かれたものと推測しています。
とりあえず今回の主目的であるBIOSのダンプを行う程度であれば、今動作していれば短時間の作業だし目的は達成できるだろうと考えてこれで済むだろうと考えました。
自宅に帰って通電前に本体を開けて確認した感じでも、見える範囲で明らかに基板に危険な状況が生じているという感じも無かったのは幸運でした。本格的に音を鳴らそうとか、そういう事を行う前には交換作業を行うべきですけどね…。

BIOSダンプの記事は情報編実践編に分けました。

2022/10/03 初版
2022/10/04 一部の語彙の修正と解像度モード情報、ならびに補足情報の追加
2022/10/04 後に書いた記事へのリンクを追加

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